「SAPIXがつらい」と感じる小学生の共通点3つ【元講師が解説】

どんな子はSAPIXに合わないのか?元講師が解説
中学受験の第一歩であり大きな分かれ道となるのが「塾選び」です。
その選択肢のひとつとなるのがSAPIX小学部。難関中学を目指すご家庭に人気のあるSAPIXですが、他の塾よりも相性の良し悪しが顕著で、すべての生徒に合うとは限りません。
とりあえずSAPIXに入ってみたけど、うちの子には合っていないかも…

そんなお悩みを持つ保護者の方に向けて、SAPIX講師として指導してきた経験から「SAPIXに合わないお子さんの特徴」を3つにまとめました。お子さんにとって最適な学習環境を見極めるヒントになれば幸いです。
①やる気にムラがある生徒はSAPIXで挫折しやすい
SAPIXの特徴のひとつは「進度が速い」という点です。
しかも、授業中に完結するのではなく家庭での復習を前提としたカリキュラムなので、授業を受けっぱなしにしていると理解が追いつかなくなる恐れがあります。
このような方針のSAPIXにおいては「安定して学習に向き合える子」が圧倒的に有利です。逆に、やる気にムラがある子は勉強のリズムを作ることが難しくなり、知識に穴ができてしまいます。
たとえば、「今日はがんばる!」と集中できた日も、翌日にはやる気が下がってしまい家庭学習を放置。そして次の授業で理解が追いつかず、授業についていけない → ますますやる気を失う……という悪循環に陥りやすくなるのです。
もちろん、やる気の波は子どもにはつきもの。でもSAPIXのカリキュラムに乗っていくには「毎日少しずつ継続して取り組めるタイプ」の子が向いていると言えるでしょう。
SAPIXの中学受験カリキュラムは4年生から本格スタートします。
それでも低学年の入塾者が少なくないのは、早くから学習習慣を付けさせることの重要さを感じている保護者が多いことの表れだと言えます。

②完璧主義の生徒はSAPIXでプレッシャーを感じやすい
完璧主義の子は「まじめで努力家」と思われがちですが、SAPIXではかえって大きな負担になることがあります。
SAPIXは4年生以降になると教材の量が多くなり、テストの復習などの負担も増加します。それらを全部「完璧にこなしたい!」と思ってしまう子ほど、精神的に追い込まれやすいのです。
たとえば、1つの問題でミスをしただけで強く落ち込んだり、家庭学習が時間内に終わらないことにストレスを感じたり。「もっとやらなきゃ」と思うあまり、睡眠時間を削ってしまうケースもあります。
完璧主義だと「できないこと」に目が向きやすく、自己肯定感を下げる恐れもあります。

実際、SAPIXで成果を上げている子たちは勉強が得意なだけでなく取捨選択がうまい子が多いです。必要なところを見極めてメリハリをつける柔軟さが、結果的に継続力やモチベーションの維持につながっています。もちろん、どの問題を優先するべきかの判断は難しいので、保護者や講師のサポートが不可欠です。
お子さんが「真面目すぎる」「ミスに過敏」「全部やらないと気が済まない」といった傾向がある場合は、SAPIXよりも面倒見のよい塾や、カリキュラムにゆとりのある塾の方が向いている可能性もあります。
③競争が苦手な生徒はSAPIXの環境に疲れやすい
SAPIXは、競争の中で子どもが自ら伸びていくスタイルの塾です。
毎月のテストや成績によって決まる座席など、子どもたちは常に「比較される環境」に身を置いています。このシステムがハマる子にとっては「次は上のクラスを目指したい!」「ライバルに勝ちたい!」と、比較されることがモチベーションになります。
ところがこの環境は、比較されること自体にストレスを感じる子にとっては苦痛です。「人と競うより自分のペースでやりたい」といった子にとって、SAPIXの空気感は息苦しいかもしれません。
また、SAPIXの授業はテンポが速く、他の生徒との発言・理解スピードも比べられやすいため、自然と周囲との競争意識が求められる場面が多くなります。競争心がないわけではなくても「比較されると萎縮してしまう」タイプのお子さんには負担が大きいことがあります。
比較されることが原動力になるかプレッシャーになるかは、性格や年齢によって大きく異なるということです。

「順位に興味がない」「競争より協調を大切にする」「比べられることが嫌い」といったタイプであれば、個別対応のある塾の方が、その子らしさを発揮できるかもしれません。同じSAPIXで選ぶなら、比較的アットホームな雰囲気のある小規模な校舎をおすすめします。

自分に合った環境で学ぶことが合格への近道
SAPIXで働いていた当時、もどかしい瞬間のひとつが「塾とお子さんのミスマッチを感じたとき」でした。
言うまでもなく、中学受験で難関校を目指すご家庭にとって非常に魅力ある塾がSAPIXです。ただし、それを活かせるかどうかはお子さんの性格や学習スタイルとの相性などに大きく左右されます。
中学受験は長い道のりだからこそ、塾選びは「合格実績」だけでなくお子さんが前向きに学べる環境かどうかという視点も忘れずにいたいですね。