個別指導

そもそもSAPIX生に個別塾は必要なのか?元講師が思うこと

コージ
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「個別塾の併用」について、実体験や経験を踏まえて、元SAPIX講師の立場から率直にお話ししたいと思います。この記事は、個別塾をただ推奨するためのものではありません。

「我が家には本当に個別塾が必要なのか?」を考える参考になれば幸いです。

コージ
コージ

SAPIXの授業はすごいが、合わない子もいる

SAPIXの教材と授業スタイルが洗練されているのは、通塾中の方ならよく知ることです。

ただし、生徒が十人十色である以上、SAPIXがすべての子にフィットするわけではありません。「勉強ができる」ことと「SAPIXのテストの成績が良い」ことは、時に隔たりを感じるものです。

 実力はあるのに「SAPIXに合わない」と感じる子の例

  • 自分のペースでじっくり考えるタイプ
    展開の速いSAPIXの授業に置いていかれがち
  • 納得しないと前に進めないタイプ
    「とりあえず覚える」「解きながらコツを掴む」が苦手
  • 周囲を気にして、間違えるのを極端に嫌うタイプ
    分からない問題は空欄のまま、記述問題に消極的

このようなタイプの子は、実力はあるのにSAPIXの授業になじめないケースがあります。
逆に、このようなタイプの子であってもSAPIXの空気に順応していくと実力を発揮できるケースもあり、適応力の高さに驚かされることもあります。

こんな子は個別塾を検討してもいいかもしれない

SAPIXの授業についていくには、家庭でのフォローが欠かせません。
でも、こんなサインが見られたら外部の助けを考えてもよい段階です。

 SAPIXと個別塾の併用を検討するべき状況

  • 授業の理解が追い付かず、学習サイクルが滞っている
    塾に行くので精一杯。ほとんど復習していない科目がある
  • 高学年になり、家庭学習のフォローが厳しくなってきた
    算数の特殊算や国語の記述など「分かるけど教えられない」レベルも増
  • 勉強が原因で親子関係がギクシャクしている
    親が教えようとすると、反発が強くなる

わたしも講師時代、担当生徒の保護者の方から上のような相談を何度か受けました。
SAPIXの講師という立場でできることには、かなり限りがあります。授業前後に本人へ声がけ、他講師との状況共有、保護者へのフィードバック連絡などがその例で、相談を受けた講師は最善を尽くしてくれるのがSAPIXのいいところです。

SAPIXでの対応に限界があるときは、系列の個別塾プリバートをおすすめすることも。ニーズがありそうな場合にのみ提案することで、セールストークとかではありません。

コージ
コージ

親子の信頼関係は受験よりも大切です。一度ギクシャクした関係は、親子と言えどすぐ修復できるとも限りません。もしその関係にヒビが入りそうで、それが個別塾利用によって改善する可能性があるなら、早めに個別塾の力を借りるべきです。

逆に、こんな子は個別塾がなくてもOK

 少し成績が悪いくらいなら、焦らなくても大丈夫

  • 家での勉強はある程度できている
    授業後の復習などの約束事を、8割くらいは守っている
  • ミスに対して素直に向き合える
    誤答を「伸びしろ」と捉えて、前向きな対策を講じられる
  • 親と一緒に振り返りや対策ができている
    中学受験という「仮想の共通敵」に親子で立ち向かう空気感がある

少し乱暴な言い方ですが、多少成績が落ちたくらいで過剰に心配する必要はありません。

SAPIXの成績が下がったときは、足りないものを見つめるためのチャンスだと思うべき。親が一喜一憂しすぎると、子どもの精神衛生にも悪影響を及ぼします。
「わが子の将来のため、親にできることは何でもやってあげたい!」と思う気持ちはよく分かるのですが、それは個別塾に入れることではなく、お子さんの成長を慌てず見守ってあげることなのかもしれません。

個別塾は、誰の成績でも上がる「魔法の杖」ではない。
負荷を掛けすぎて勉強のサイクルが崩れる可能性もあることに要注意です。

コージ
コージ

現場ではどう思っていた?

個別塾に対する現場の講師側の思いは、賛否両論ありました。
SAPIXの先生に配慮して個別塾を使う/使わないを決めるのは筋が違うと思いますが、こちら側にはこんな見え方をしている、こんな出来事があったということを小耳にはさんでいただければ幸いです。

①「個別の先生に聞くから大丈夫」とつぶやいた男の子の例

5年生の後期に、アルファベット上位コースを担当していたときのこと。

活発に発言はするけれど、授業中にノートを取らない男の子が目に入りました。マンスリーテストの結果が振るわなかった直後だったこともあり、授業後に「どうしてノートを取らないの?」とたずねると、その子が「分からないところは、個別の先生に聞くから大丈夫」だと答えました。
わたしのキャリアが浅かったこともあり、力不足を感じました。しかし、同コースを担当するベテラン講師に相談したところ、彼はどの授業でも同じような姿勢だったと知りました。

彼は、個別塾を「伸びるため」ではなく「楽をするため」に使ってしまっていたのです。もちろん個別塾が悪いわけではありませんが、頼り方を間違えると「自分で考えるクセ」が失われるリスクがある例です。

② 算数の偏差値を40→55まで上げた女の子の例

ある女の子は、新6年生の2月の段階で算数の偏差値が40前後。文章題を見ると固まってしまい「以前解けたはずの問題も、どこから手を付けていいか分からなくなってしまう」という状態だったそうです。

保護者の方が心配され、4月から週1回だけ算数の個別指導を取り入れました。私は直接の指導ではないのですが、算数科の先生によると、彼女は質問教室をフル活用したことに加えて、個別塾の先生が算数のニガテを指導してくれたそうです。

個別塾で5年生の算数をていねいに取り組んだことで、夏前には偏差値が50を超え、10月には55に届きました。算数の負担が減ったことで、国語の授業中にも笑顔が増えてきた様子を覚えています。
大人数の授業だけでは救いきれない子に、個別の補強が効果的に働くことがあると実感した例です。

「親のため」の個別塾のすすめ

講師時代、生徒だけでなく多くの保護者とお話しする機会がありました。
そこで感じたのは、個別塾には「保護者の負担」を解消する役割もあるということです。

勉強を教えるためには距離感も必要かもしれない

大前提として、親という立場から我が子に勉強を教えることは非常に難しいです。

その理由はさまざまですが、たとえば「教える→教わる」という関係には親子の距離が近すぎたり、指導の中に子への感情が混じったりするからだと推測します。理知的に話される親御さんからも、わたしがSAPIX講師時代に同様なご相談をいただいたことがあるので、親に指導力がないとか説明が下手だとか、テクニック面の問題だけが原因ではないようです。

反対に、先生と生徒は本来ほぼ他人といえる距離があるので、根本にお互いの冷静さがあります。勉強を教えるという観点では、この距離がいい方向に作用するのかもしれません。

「塾講師が自分の子の勉強は上手に教えられない」っていう話、よく聞きます。

コージ
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先生は外注できるが、親はあなたしかいない

中学受験界では「家庭学習は親が見るべきか?」「個別塾に頼ったら手抜きだと思われるかな…」という悩みがよく聞かれます。
特にSAPIXは、親の負担があることを入室前の説明会等でも伝えています。それゆえに「説明を踏まえてSAPIXに入った=負担を承知した」と思わせる雰囲気があるように思えてなりません。そのくらい過酷な世界だということを、入る前に分かってもらうのは大切なのですが。

わたしが元講師として伝えたいのは「親の役目は誰にも代われない」ということです。

勉強の指導は個別塾に任せて、親は親にしかできない生活面・精神面を支える。
親子関係を第一に重視したために個別塾を採用するのは、まったく手抜きではなく、むしろ賢い考えだと考えています。もちろんスケジュールやお金の問題もありますが、無理して親子関係がギスギスするくらいなら「手を抜く」のではなく「役割を分ける」という発想で、個別塾を検討してみてほしいと思います。

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コージ
コージ
元SAPIX小学部講師
首都圏某塾→SAPIX小学部講師→ブロガー SAPIXでは国語科講師として約10年勤務し、1,000人以上の小3〜小6を指導。塾と家庭のギャップ・子どもに合う学び方の大切さを現場で感じて、教育メディア「サピログ」を立ち上げました。
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