知っているふりする子どもたち
- 知らない言葉を「知っているふり」をする子は意外と多い
- 「こんな言葉も知らないの?」は親の禁句
- 知らない言葉を目の前にして「知らない」とハッキリ言うのは大事
子どもの語彙の乏しさに悩む親たち
子どもの語彙力を鍛えたいのですが、どうすればいいでしょうか?

何かの感想を聞くと「楽しかった」ばかり。記述問題では「うれしかった」「悲しかった」を連発。語彙力について悩む親御さんがいらっしゃるのは、いつの時代も変わりません。
- 本を読め
- 新聞を読め
- 辞書を引け
語彙力を鍛えるためによく言われるのは、こんな方法です。
しかし、これらは「語彙力を鍛えたい」という質問の答えになっていないような気がします。
語彙力とは、読書すること・新聞を読むこと・辞書を引くことの結果として身に付く力であって、語彙力を身に付けるために読書するというのは、順番が違うと思うのです。
「中学受験の必須語彙1000」みたいな本もありますが、あれを自ら読める子は、そんな本なくても語彙力は十分じゃないかなあと思ったり。

え、じゃあどうすればいいんですか

ということでこの記事では、語彙力を鍛えるために大切なことを考えてみます。
知らない言葉を「知っているふり」をする子は意外と多い
SAPIXで国語の授業をしていて、知らない言葉を「知っているふり」をする子は少なくない印象でした。
特に、下位コース。同じテキストで授業をしていても、上位コースでは「この言葉ってどういう意味ですか?」と質問があるのに対し、下位コースでは質問がない(けど、こちらから意味を尋ねると沈黙…)というイメージです。
授業中に質問するハードルの高さ・授業の雰囲気がちがうので、この事象のすべてが「知っているふり」なわけではありませんが。

何をもって「知っている言葉」とするのかは議論がありますが、ここでは「その意味を4択問題で出題されたときに正答できる言葉」と定義しておきましょう。
なぜ知っているふりをする?理由と対処法
「知っているふり」をしている子どもに、悪気があるとは思いません。
ではなぜ知っているふりをするのか、理由と対処法を考えます。
理由① 調べるのがめんどくさい、どうせすぐ忘れる
この言葉を「知らない」って言ったら、意味調べさせられる。
辞書開けるの面倒だし、どうせすぐ忘れちゃうから「知ってる」ことにしておこう…

気持ちは痛いほどわかります。調べてノートに書いても覚えられないんですよね。
対処法:子どもだけの例文を作る
すぐ忘れちゃう語彙を覚える方法としては、例文を作るという手があります。
この方法は、次の記事が非常に分かりやすかったので一部引用します。
例えば、「相関」という言葉を知らなかったとします。これを辞書で調べると読む気が失せるほどややこしいことが書いてあります。こんな語彙ノートを作っても吸収するとは考えにくい。しかし、その言葉の意味そのものはあえて書かずに、文章から何となく意味がわかるような、その子にぴったりの一文を親が作ったとします。
「かけっこの速さと計算の速さは相関がなかった」
かけっこでいつも一番の子どもにこの文章を読ませると、もう説明の必要はないでしょう。
【桜井信一の攻める中学受験】語彙力を上げる方法は親が一番よく知っている
辞書に載っている説明は、どんな文脈にも適用できるようになっています。
たとえば:「相関」の意味を辞書で引くと
二つ以上の事物の、一方が変われば他方もそれに連れて変わるとか、あるものの影響を受けてかかわり合っているとかいうように、互いに関係を持つこと。また、そういう関係。
この最大公約数のような辞書的説明を、お子さんだけに響くような例文で理解できたとき、言葉が腑に落ちて語彙力の一部になるのではないでしょうか。
相関の「辞書的な」意味をゼロから記述させる問題なんてまず出ません。たとえ自分しか納得しなかったとしても、このような「生きた語彙」の方が価値があります。

理由② 「知らない」と言うのが恥ずかしい、怒られそう
こんな簡単な言葉なんで知らないの?前に出てきたけどもう忘れたの?
と思われそう。怒られるかもしれないし「知ってる」ことにしておこう…

「こんなの知ってて当たり前」という雰囲気は、学年が上がるにつれて増えてきます。
ポジティブにとらえれば、周囲の目を気にすることができるのは精神的な成長だと言えますが、語彙力を鍛える機会を逃しているという意味ではもったいないことです。
対処法:「知らない」を弱点ではなく、成長のチャンスだと捉える
語彙は文章を理解するのに必要であると同時に、語彙そのものがテストで問われることもあります。
つまり語彙を増やすことは、間接的にも直接的にも国語の成績につながる。知らない言葉を見つけたら、それは成長につながる「発見」だと前向きに考えることが大切です。
「こんな言葉も知らないの?」は親の禁句。
100回忘れても101回目に覚えると信じて、ぐっと飲み込みましょう。

「知らない」とハッキリ言うのは語彙力強化の第一歩
知らない言葉を「知らない」と言えない子が、語彙力を伸ばそうとするのは難しいです。
子の語彙力を育てるための親のスタンスとして、まずはお子さんがきちんと「知らない」を言えるかどうかを確かめていただければ幸いです。