四谷大塚とSAPIXを徹底比較!費用や偏差値・宿題・保護者の負担
四谷大塚とSAPIXの費用や親の負担・合格実績の違いとは
首都圏で中学受験を検討するなら、学習塾の候補に挙がるのがSAPIX小学部と四谷大塚です。
老舗の四谷大塚と新進気鋭のSAPIXは、いずれも高い実績を誇る名門塾ですが、元SAPIX講師である筆者が、次のポイントから両塾の違いを解説します。
- 費用
- 授業方針(予習重視or復習重視)
- 授業スピード
- 宿題量
- 保護者の負担
- 合格実績
- オンライン授業への対応
比較ポイント① 費用
まず、SAPIX小学部と四谷大塚の費用を比較してみましょう。
ここでは6年生の授業料やテスト・書籍代を中心に比べます。
SAPIX:授業料66,000円/月 + テスト・書籍代
SAPIXの6年生の授業料は、2024年度の首都圏校舎で66,000円/月(税込)です。
この授業料には、必修テキストや施設維持費・冷暖房費などが含まれています。
以下に、追加で発生する費用の例をご紹介します。
- 公開テスト受験料:6,050円×2~4回
- 地図帳や問題集などの書籍代:20,000~30,000円
- 特別講習費(夏期講習、難関校SS特訓など)
四谷大塚:授業料57,750~79,750円/月 + テスト・書籍代
四谷大塚の6年生(4教科本科コース)の授業料は、前期と後期で異なります。
前期(8月まで):57,750円/月(税込)
後期(9月以降):79,750円/月(税込)
また、テストや教材など以下の費用が追加で発生します。
- 合不合判定テスト:5,280円×6回(4, 7,9,10,11,12月)
- 教材費:16,000円~20,000円×2回(前期分と後期分)
- 特別講習費(夏期講習など)
塾の方針は異なるが費用の差は小さい
SAPIXと四谷大塚の年間授業料を比較すると…
SAPIX:66,000円×11ヶ月(8月分を除く)=726,000円
四谷大塚:57,750円×7ヶ月+79,750円×5ヶ月=803,000円
6年生の授業料では、四谷大塚よりSAPIXの方が年間7.7万円安いということが分かります。
しかし、実際には授業料だけでなく、年度によって変わる特別講習費・必修の教材費(SAPIXは授業料に含まれている)・入塾費(SAPIXは33,000円に対して、四谷大塚は22,000円で免除規定もある)なども加味されます。
また、SAPIXは後述するように保護者の負担が大きいため家庭教師が必要となるかもしれません。
SAPIXと四谷大塚の2択なら、費用よりも授業方針・保護者の負担・志望校の合格実績などの条件を踏まえ、お子様と塾の相性を考えるとよいでしょう。
比較ポイント② 授業方針(予習重視or復習重視)
次に、SAPIXと四谷大塚の授業方針を解説します。
SAPIX:復習主義の授業・テキストの解説が少なめ
SAPIX小学部は「復習主義」を貫いているのが特色です。
テキストはどの教科も1日分ずつ分かれていて、当日に使う分だけを授業日に配布するため、生徒はどの授業でも初見の問題と向き合うことになります。知的好奇心のある生徒・飲み込みの速い生徒は、SAPIXの授業で実力を発揮しやすいと言えます。
一方、SAPIXのテキストは解説や途中式が少ないという指摘もあります。SAPIXは家庭での復習を重視していますが、復習時には保護者や家庭教師のサポートが必須となります。
四谷大塚:予習主義の授業・テキストの解説が手厚い
四谷大塚は、SAPIXと反対の「予習主義」です。
授業に臨む前に予習させることで、授業時間内での理解度をより深めるのが四谷大塚の方針です。
SAPIXとは正反対ですね…!
受験直前期に、SAPIX→四谷大塚の転塾(または逆)が難しいと言われる背景のひとつです
また四谷大塚では、中学受験生の2人に1人が使うとも言われる「予習シリーズ」を採用しています。
このテキストは「小学生が読んで理解できる教材」をモットーに、ていねいで分かりやすい解説が加えられていて、予習にも使えるよう配慮されています。
比較ポイント③ 授業スピード
SAPIX小学部と四谷大塚の授業スピードを比較します。
SAPIX:上位層に合わせた進度の速い授業
難関校受験を見据えたSAPIXは、授業の進度が速くなっています。
各コースの上位2割の生徒に合わせたスピードで授業が進むので、日ごろの学校の授業を退屈に感じる生徒にとってはこの上ない環境だと言えます。
一部の生徒からは「解説が速すぎて付いていけない…」という声も。
基礎内容が理解できているか、どの教科も家庭学習で確認する必要があります。
四谷大塚:SAPIXと比べるとゆっくり
四谷大塚の授業は、SAPIXと比較すると遅いスピードです。
しかし、5年生の終わりまでに6年生のカリキュラムをすべて終える点は、四谷大塚もSAPIXも共通。
学校の授業と比べると進度が速いですが、四谷大塚の場合には予習ができるので、きちんと予習してから授業に臨むことが成績アップにつながる鍵です。
比較ポイント④ 宿題
次に、SAPIX小学部と四谷大塚の宿題について分析します。
SAPIX:宿題量は少なめ・保護者のフォローが必須
SAPIXの宿題(家庭学習)は、分量としては少なめです。
しかし、復習内容であることやテキストの解説が少ない都合上、その単元が不得意だったり授業内容が理解できていなかったりすると、宿題に手を焼くこともあるでしょう。
扱う問題の優先順位付けや採点など、宿題をするときにも保護者のフォローが必須です。
家庭学習のサポートのため、保護者の方にもある程度の知識が求められます。
特に算数はかなりレベルが高く、中受経験がないと悪戦苦闘することもあるようです。
四谷大塚:宿題量は普通・オンラインでの映像視聴も必要
四谷大塚で出される宿題の量は、SAPIXと比較すると多いようです。
四谷大塚の宿題には、毎週行われる「週テスト」のための勉強や、テスト前後に用いる予習ナビ・復習ナビの映像視聴など、ただ手を動かすだけでは終えられない課題も含まれます。
上位コースの生徒にとってはスムーズに終えられる課題が多い反面、中位~下位コースの生徒は「なんとなく映像を見るだけ」になりがち。映像授業にも抵抗なく取り組めるかどうか、事前に子どものタイプを把握しておくと安心です。
「きちんと課題は終えているのに、なぜか成績が上がらない…」という原因にもなるため、継続的な保護者のサポートが重要です。
比較ポイント⑤ 保護者の負担
次に、SAPIX小学部と四谷大塚に通塾させたときの保護者の負担です。
費用面は上で解説した通りなので、サポート面での保護者の負担を比較します。
SAPIX:保護者の負担大・個別塾の併用も多数
SAPIXは「通わせて終わり」ではなく、保護者のフォローが不可欠です。
前述の通り、授業は復習がメインであること・テキストの解説が手薄であることなどから、家庭できちんと復習しないと成績アップにはつながりません。また、1日の授業でテキストは5冊ほど増えていくので、そのファイリングも保護者なしでは困難です。
時間が取りにくいSAPIX生のご家庭では、家庭教師を活用するケースも多数。
PRIVATO(プリバート)はSAPIX準拠の個別指導塾なので、状況次第では併用も検討しましょう。
四谷大塚:保護者の負担は並・個別塾の併用は少ない
四谷大塚生の保護者の負担は、SAPIXに比べると軽いようです。
充実したテキストの解説・Webコンテンツ「高速基礎マスター」の活用など、生徒ひとりでも学習しやすい教材やシステムを採用していることが背景にあります。
保護者の負担はさほど大きくないとはいえ、自発的に勉強する子どもばかりではないので、勉強の進捗チェックなど介入すべき点は多々あると言えるでしょう。
また、サポートなしでも勉強しやすいためなのか、四谷大塚に準拠する個別指導塾はありません。
複数の大手個別指導塾では、四谷大塚生向けのコースを設置しているので、併用するのならその中から選ぶケースが一般的です。
比較ポイント⑥ 合格実績と偏差値
次に、SAPIX小学部と四谷大塚の合格実績や偏差値を解説します。
【2024年度最新】SAPIXと四谷大塚の合格実績
SAPIXと四谷大塚に在籍した生徒の、2024年度の合格実績を比較します。
四谷大塚の実績は、四谷大塚に通塾した生徒のほか、同塾が作成した教材やシステムを使用する「四谷大塚ネットワーク」に加盟する塾の合格者数も含んでいます。
SAPIX | 四谷大塚 | |
---|---|---|
開成 | 262 | 123 |
麻布 | 182 | 68 |
武蔵 | 59 | 53 |
桜蔭 | 189 | 57 |
雙葉 | 45 | 33 |
女子学院 | 131 | 65 |
筑駒 | 98 | 39 |
渋幕 | 383 | 176 |
渋渋 | 229 | 79 |
早実 | 48 | 54 |
学習院女子 | 60 | 73 |
灘 | 33 | 45 |
ラ・サール | 17 | 207 |
渋幕・渋渋・筑駒などの名門共学校や、男子・女子御三家など首都圏の難関中学校では、SAPIXが四谷大塚を上回る結果となりました。
一方で、灘やラ・サールなど首都圏以外の難関中や全国の中堅校では、四谷大塚が高い実績を挙げています。
SAPIXと四谷大塚の偏差値の違いとは?
SAPIXでは「合格力判定サピックスオープン」を、四谷大塚では「合不合判定テスト」を実施しますが、それぞれのテストでは受験者が異なるため偏差値の出方が変わります。
以下に、代表的な中学と両塾の偏差値を比較した表をご紹介します。
SAPIXの偏差値 | 四谷大塚の偏差値 | |
---|---|---|
開成 | 68 | 71 |
筑駒 | 70 | 73 |
海城(2月1日) | 60 | 63 |
桜蔭 | 62 | 71 |
豊島岡女子(2月2日) | 61 | 69 |
浦和明の星(1月14日) | 57 | 64 |
渋幕(1月22日) | 男64女64 | 男70女72 |
慶應中等部(2月3日) | 男59女64 | 男65女70 |
同じ中学の場合、SAPIXの方が5前後は高い偏差値が出る傾向にあります。
より正確な判定を出すため、自分と同じレベルの受験者が多いテストを受けることがオススメです。
比較ポイント⑦ オンライン授業への対応
最後に、オンライン授業に対するSAPIXと四谷大塚の方針を比較します。
SAPIX:オンライン授業を開講していない
SAPIX小学部では、2024年現在オンライン授業を開講していません。
受験間近の6年生・コロナ禍で学級閉鎖になった生徒を対象として、例外的に授業を映像配信するケースは過去ありましたが、オンラインで授業を受けることは基本的に不可能です。
SAPIXは、生徒と先生が黒板をはさんで双方向的に議論するスタイルの授業を重んじます。オンラインではこの議論スタイルを維持できないという判断なのでしょう。
というのは建前で、IT人材が足りていないことも理由にありそうです
四谷大塚:オンライン授業やWebコンテンツを活用
対する四谷大塚では、映像授業システムやオンラインツールの活用に積極的です。
四谷大塚では、小学1~3年生を対象とした「リトルくらぶ」や、小学4~6年生を対象とした「進学くらぶ」など、自宅で四谷大塚の授業を受けられるシステムを展開しています。
都合により通塾が難しい生徒も、パソコンやタブレットを使って離れた場所から授業が受けられるのが四谷大塚のメリットです。
また、Webコンテンツ「高速基礎マスター」では、志望校合格に向けて力が足りない単元をAIが特定・分析することで、一人ひとりに合った演習問題に取り組めます。
一方で「終わるまで授業後に居残りさせられる…」「回線の不具合でゼロからやり直す羽目になった…」など、高速基礎マスターにはネガティブな声も見受けられます。
SAPIX小学部と四谷大塚の違いを押さえて塾を選ぼう!
ここまで、SAPIXと四谷大塚それぞれの特色を解説しました。
個性のある塾だからこそ、お子様やご家庭との相性を見極める必要があります。資料を請求したり説明会に出席してみたりして、ベストな塾選びができることを願っています!